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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
あんたには、山殺しという綽名がついとるのを御存知ですか」
「そがいなことは、どがいでもええが、……金さん、ほんとに、それだけないと、玉井ではお困りかな?」
「困ります。破産します」
「それでは、こがいにしよう。うちも商売じゃけに、みすみす、大損はしとうない。あんたの言い値で取ったら、こっちが破算する。それで、玉井も助かるし、うちも損せんという取引をするが一番、金さん、どうかい?」
「そんな、うまいことができますか」
「できるかも知れん、……あんたの考えひとつで……」
そういうと、※は、はじめて、いきいきと眼を光らせて、すこし膝を進めて来た。
「わたしの考えひとつ?……」
わからなかった。
「なあ、金さん、ざっくばらんで行こう。あんたは、黒石家に養子に行くことを、どがいにしても承知せんそうじゃが、考えを変えて、行きなさい。それが、なにもかも円満解決の上分別。黒石はわしの親戚になるけに、あんたを養子に世話してくれりゃ、お礼の金を出す。それを、この腐れ蜜柑の代金として、あんたに払う。三方めでたくおさまるわけぞな」
金五郎は、唖然とした。呆然となった。思いも設けぬ伏兵である。