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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
二つの偶然が新之助を救ったことになるのだが、それが、敵か味方か、判じかねるものからの結果なので、狐につままれたような気持から抜けきれなかった。
それは金五郎とても同様だ。
(無用の闘争に、巻きこまれないようにしなくてはならぬ)
と、いよいよ、警戒心が湧くのである。
君香は、「この街が、なんや、怖うなった」といい、あどけない無心の百合香に頬ずりしながら、ぽろぽろと涙を流した。そして、
「おマンはんも、今年は赤ちゃんが出来はるのやろ? つまらん意地なんか捨てて、早よ呼び戻したがええのになあ」
姉のように、金五郎を諭して、帰って行った。
二ヶ月ほどが過ぎ、真夏のころになって、ようやく金五郎の努力は実を結んだ。「若松港汽船積小頭組合」の発会式まで、どうにか漕ぎつけることが出来たのである。
とはいっても、その組合は完全なものではなかった。はじめから強力に反対し通していた友田喜造の共働組からは、一人の参加者もないうえに、栄盛組、大高組、三井物産、その他の中にも、加入しない小頭があった。それは、友田に気がねする者、組合の外にあって仕事を狙う野心家、組合の必要性に、まったく理解と関心とを持たない無知な者、などであったが、聯合組自体の中にすら、新参者である玉井金五郎の擡頭を快く思わず、そっぽを向く者があった。