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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

猫を好かん奴には寄りつかんが、あんたが来ると、そげな風に、ゾロゾロ、寄って行く。猫は賢いもんばい」

そういううちにも、七八匹の猫が、縁側に坐ったマンの、膝といわず、肩といわず、まつわりついて来た。

猫の種類は千差万別で、まったく、猫の展覧会といってよい。この家は「猫屋敷」と呼ばれて居り、川野ノブは「猫婆さん」で、どこででも通る。昔、女侠客として鳴らした島村ギンは、明治の末期に、喧嘩の怪我がもとで死んだ。ギンは「ドテラ婆」と呼ばれていたが、川野ノブも、また、「二代目ドテラ婆」と称されている。血はつながっていないのに、よくもこんなに似たものだとおどろくほど、初代に、風貌がそっくりだ。すると、ノブの方も、わざと、大丸髷を結ったり、チャンチャンコまがいの褞袍を着たり、男のような言葉使いをしたりして、初代とまぎらかしてよろこんでいるのだった。ただ、ちがうところは、猫のこと。

「先代は、猫なんか好かんじゃった。猫が傍に来ると、蹴とばしたりしよった。そんなことするもんじゃけ、猫の罰があたって、畳のうえで死ねなんだんじゃ。おギンさんが怪我した老松町の出入りのとき、なぐりこみをかけた先方の家には、黒猫が居ったげな。