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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
勝則は、頭をたれて、判決を待った。
便箋に五六枚、びっしりと細い字で書き埋められた長たらしい手紙を、法律家原田雲井は、梅干を噛んだような、鹿爪らしい顔で読む。ときどき、フン、フン、と、鼻を鳴らす。うなずく。小首を傾ける。前の方を読みかえしたり、二枚ならべて照合したり、まるで、裁判の証拠書類でもしらべているような調子だ。
やがて、読み終ると、ためいきのような、嚏のような、妙な咳を、一つした。それから、手紙を、机のうえに、一枚目から、ずらりと、順に横にならべて、
「勝則君、わかった」
と、顔に反動をつけて、いった。
どう返事をしたらよいかわからないので、黙っていると、
「この、二枚目に書いてある、光丸という芸者に、あんた、惚れとるとじゃろ?」
むきつけな言葉に、どぎまぎしたが、仕方なしに、
「はあ」
「光丸君の方も、あんたに、惚れとるじゃろ?」
「……ええ」
「真剣なのじゃな?」
「はあ」
「四枚目に、光丸君はもう妊娠しとると書いてあるが、あんたの子に相違なかろうな?」
「相違ありません」
「よろしい」原田雲井は、どすんと、机のうえを叩いた。「問題なか。惚れた同士、夫婦になるがよかたい。