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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

わしが親父に話してあぐる。なに、藤本組との縁談を破談にするくらい、わけも屁もなか。まだ、口約束だけで、結納を取りかわしちゃ居らんらしいけん、そげん、むずかしか問題も起るまい。……玉井さんは、東京から、いつ、帰るな?」

「もう、二三日と思いますが……」

「帰ったら、じき、逢うてあぐる。……勝則君、白状するが、わしの家内も恋女房でな、若いころ、いろいろ、あったとばい。どっちも、爺婆になってしもうたばって。……そげんいやあ、あんたのお父ッあんと、おッ母さんも、昔、好きあうて夫婦になりござったごたる。あんたのことも、わかってくれるさ」

「よろしく、お願いします」

「大船に乗った気で居らっしゃい。……あ、家内が帰って来たらしいな」

裏口の戸が開いて、原田夫人が入って来た。台所に、買い出して来たいろいろな物を置き、座敷に上った。

「これは、勝則さん、いらっしゃい」

「お邪魔しとります」

夫人は大柄で、風貌がどこか亭主に似ているので、「布袋夫婦」などといわれていた。

「なにもなかばって、林檎でもむきまっしょ」

「いいえ、もう、お暇しますから……」

「今、そこの角で、おッ母さんにお逢いしましたばい」