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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
友田さんは資本家と結びついています。これに対抗するには、組織の力以外にないと思うのです」
金五郎は、ふりかえって息子を見た。
月光が背後からさしていて、顔はよくわからない。しかし、静かに櫓を漕いでいる息子の柔和な顔に、なにか、憑きもののしたような妖しいもの、責任をもって、自己の行動を裏づける、強い意志と情熱とが、漂っているように、金五郎には感じられた。
(この子には、見かけによらぬ、はげしいものがある)
そして、金五郎は、嘗て、自分が通って来た道をふりかえって、息子が、同じように、危険の中へ、信念と勇気とをもって、踏みこもうとしている雄々しさを、ひそかに、是認した。新しい労働組合が必要という意味が、まだ、はっきりとは呑みこめなかったけれども、
「お前が、その方がええと思うなら、作んなさい」
と、いった。
「やってみようと思います」
夜になって、入港して来る汽船があった。汽笛の音とともに、空中に白い蒸気の花が咲いた。小伝馬船は横波を食ってゆらいだ。赤、青、白などの航海燈が、静かに辷り、汽船は白い泡の航跡を引きながら、港口へ遠ざかって行った。艫に、「パナマ丸」