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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

「ええ」

「今度の選挙には、原田君も、また、中立団から立候補する。二度出て、二度とも落選しとるけ、今度はなんとかして当選させたい。あんな変骨屋が、市会に出にゃいかんとじゃ。……勝則、おれの方はええけ、原田君へ、馬力をかけて、応援してやってくれや」

「そうしましょう」

伝馬船は、水上警察署の前を過ぎた。

聯合組前の岸壁に、船をつないで上った。

事務所には、まだ、明かりがついている。七八人の人影が、なにやら、あわただしげに、うごめき、その中に、新谷勝太郎の姿も見えた。

金五郎は、まっすぐに、玄関へ歩いて行った。

「夜業な?」

「オヤジ」と、長身の新谷が、緊張した面持で近づいて来た。「奇妙なことが起ったですよ」

「なんごと?」

「先刻、……そうそう、オヤジが魚取りに漕ぎだしてから、間もなく、パナマ丸が入港して来たとです」

「中ノ島のすこし先で、すれちごうたよ」

「あれは、入港次第、徹夜で、三菱の荷物炭を積みこむ打ち合わせになっとったもんじゃけ、わたしは先番の三崎組の札を掛けた。三崎の若い衆も出て来て、浮標にかかるのを待って、段取りしようとした。そしたら、オヤジ、三菱の甲板番が――これは、共働組でやることになっとる。