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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

……というんですよ。もう友田組が来る筈、といいます。それで、ボーシンたちが、今、小伝馬で上って来て、騒いどったんです」

「この前の鞍馬山丸も、そうじゃったな?」

「甲板番がいうとりましたよ――もう、三菱の仕事は、みんな共働組でやって貰うようになるかも知れん。……って」

「そうか」金五郎はちょっと唇を噛むようにしたが、「仕方ない。三崎組に引きあげるようにいいなさい。現場で、おっせかっせいうて、喧嘩になっても困る。話は、明日、わたしが出なおして来て、つける。……まあ、今夜は、一杯やって、黙って引き取んなさい。このスズキを半分、あげよう。酒は、おれの名で、木村屋からでも取っときゃええ」

金五郎は、台所に入ると、庖丁を借りて、スズキを真二つにした。尻尾の方を残し、

「勝則、行こう」

頭の方を荒縄でぶら下げて、すたすたと、先に立った。

背後で、時計が十一時を打った。

「お父さん」

「うん?」

「炭積機問題の余波ですね?」

「いやらしいなあ」

吐きだすようにいって、金五郎は、路上に、唾を吐いた。

西新町に出た。

「おごめん」

と、一軒の店ののれんを潜った。

古い船板の看板に、「六ゾロ」