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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

先刻、道で逢ったとき、「親玉食堂」で、昼食をしようということになったのだが、「現場」に行く豆八だけは、時間がなくて、同道しなかったのである。料理が来るまで、ビールを飲む。

「友田喜造が――絶対当選させてやる、というたって?」

「ええ――立候補した者は、一人も落さん自信がある。……そう、友田さんが、何度も、お父さんにいうとりましたわ」

「ははあ」原田は、天井の一角を睨むようにして、「また、例の手か?……買収、饗応、戸別訪問、恐喝、……それに、わが党政府の選挙干渉、……こげんガラクタのごたる候補者ばっかりが出て、全部上るといやあ、それしか考えられん。糞う、そげん何時もかつも、柳の下に泥鰌が居るもんか。今度は、負けんぞ」

「まあ、原田君、そんなに、いいなさんな」井上安五郎が笑って、「こっちの候補者だって、そんなに粒揃いというわけにゃいかん。どうかと思う者もある。民政党の中だって、立派な候補者も居るよ。ただ、最善を尽して、やってみる以外にはない。……今度は、君を、どうしても当選させたいと思うとるが、……」

「今度は、大丈夫じゃろうと思う」と、金五郎も、確信ありげに、「普選になったんじゃし、若松の者も、そう盲目ばかりでもないよ。