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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
母親として、息子が心を惹かれている女が、どんな女か、たしかめて置きたい気持は強かったのである。
そして、マンは、全然、知らずして、夫が心を惹かれている女をも、同時に見たわけであった。
「帰るのか?」
と訊く金五郎には、
「千博が、また、熱を出しかけとったもんじゃけ、気がかりで、落ちついて見とられん。ババンにばかり委せとくのも悪いわ」
そう答えて、席を立ったのだった。
劇場裏とは逆の方向に廻ったので、一足先に出た勝則が、どんな目にあったかということは知らなかった。
友田一味は、最初から、日若座に来ている金五郎、マン、勝則、の三人に、それぞれ、なんらかの方法で、攻撃を加える計画を立てていたもののようである。そのため、混雑している客にまじって、どこからか監視の眼を光らせて、行動を探偵していた。勝則がまずその作戦に引っかかったのである。つづいて劇場を出たマンの後からも、遊人体の男が二三人、尾行していた。
明かるい本町通りに出ると、書店に入って、病床にいる末子のために、絵の美しいお伽噺の本を数冊買った。果物屋で、千博の好きなバナナと林檎とをすこし買った。
紙包みを両手で前胸のところにかかえて、旭小路のゆるい坂を登った。