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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
「昨夜、酔っぱらって、溝に落ちこみました」
「危なかなあ。どこを、怪我さっしゃった?」
「この左股、……なんか、ブリキ缶の切片のようなもんがありまして……」
「そげんか足どりじゃあ、沖の現場にゃ行かれんばい。休んだが、よか」
「いえ、今日は荷役じゃありません。労働組合のことで、聯合組のボーシン連中が集まることになっとるもんですから。……それでは」
「気をつけて行かっしゃい」
危なかしい足どりの勝則が、「三福湯」の角へ消えるのを見送ってから、玄関を入った。
「おごめん」
「はあい」
箒を持った前かけ姿のマンが、跛をひきひき出て来た。座敷を掃いていたらしいが、箒を杖がわりにして、痛そうに顔をしかめている。
「おやあ、ごりょんさん、どげんしました?」
「昨夜、踊りを観に行ったかえりに、安養寺の坂で、転けましてねえ」
「そりゃあ――あそこは、水道工事の跡がやりっぱなしで、危険じゃけん、早よ片づけて、街燈をつけんにゃいかん。……ちゅうて、わたしが、五へんも、十ぺんも市役所に抗議したとですけんどなあ。……そうですか。……玉井さんは?」
「庭に居ります。どうぞ」
原田は上って、庭の方に廻った。