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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
……
どれくらい時間が経ったか。ふっと、眼のさめた勝則は、びっくりした。
かたわらに、光丸がいる。
あたりは、ぼうと、うす明かるい。電燈は消してあるけれども、障子が白く、かすかな光線をうけていて、その明かりが狭い部屋を浮きあがらせている。勝則は、異様な昏迷をおぼえた。
(ここは、一体、どこだろうか? 一体、あれから、どうなったんだろうか?)
自宅で、子分たちと酒を飲んでいるうちに、視界朦朧となりはじめてから、まったく、記憶がない。断片的に、幻燈のように、記憶が飛び飛びになっているが、それも夢といった方が早い。手をたたいて、子分たちと歌ったり、踊ったりしたようである。やけ糞みたいに、しきりに、なにか、どなり散らした。ゆらゆらと立ちあがると、母が、
「もう、外には出らんで、早よう寝なさい」
そういったようでもある。しかし、それも、夢であったかも知れない。
ふと目ざめたときも、夢の中にいるように思った。頭のしんがズキズキと疼き、まだ、酔っているように、顔や身体中が火照っている。はじめは、酔いつぶれて、自分の家のどこかに寝ているのかと錯覚した。
光丸の顔が見えて、仰天した。