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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
「なんぼ親孝行でも、法は法、可哀そうでも、罰金をかけにゃあなるまいなあ」
「お役人さん、もうしませんけ、どうぞ、堪忍して……」
「さあねえ」
思わせぶりに、役人は、じろりと、マンを見た。この、「鬼」という綽名をつけられている専売局の駐在員は、さっきから、マンの後から歩いてゆくうちに、下等な慾情をそそられた模様である。こりこりとひきしまった若い女の身体つき、腰や尻の弾力に富んだ動き、藁草履をはいた白い素足、ほつれ毛のたれかかっている小麦色の首すじ――この、眼前にある新鮮な熟れた果実を、とって食べたくなったものにちがいない。
「谷口の、罰金はいやかね?」
と、舌なめずりする口調で、マンの方に寄って来た。三角眼が淫らに光っている。
「はい、いやです」
「とりやめにしてあげようかね?」
「お願いします」
「じゃが、タダというわけにはいかんなあ。あんたもこれだけのことをしといて、タダですむとは、まさか思うて居らんだろう?」
「どうしたら、よろしゅう、がんひょうか?」
「そうじゃなあ、一番簡単なことですますとするかね。……な、それで、よかろ?」
マンも、男の考えていることが、やっとわかった。