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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

その年の暮、勝則が生まれたのであった。皺のあらわれた金五郎夫婦の顔に、歳月と歴史とが織りなす、人間の宿命を思う大らかな表情が、共通に、あらわれていた。

「無理に、勝則を藤本と縁組みさせたら、おれが黒石家に養子に行ったときのようなことが、起るかも知れんなあ」

金五郎が、そういえば、

「あたしも、村長さんの二男坊の敬やんと、夫婦にならねばならん義理あいに、なっとったんじゃけど、……」

マンも、自分に引きくらべて、それをいうのだった。

すでに、夫婦は、息子を許す気持で、一致していた。

「辻木の方も、あきらめにゃ仕様がないわい。要之助が、山笠で喧嘩をふっかけたために、勝則を光丸のところへ、追いやったようなもんじゃけ」

「そら、そうと、お父さん、なんで、勝則を、博多にやんなさるの?」

「一番で発ったあと、すぐ、青柳さんのところ宛、電報を打つつもりじゃ。ウナ電で打ちゃ汽車より早よ着く」

「どんな電報?」

「カツノリ、ミツマル、フタリトモ、モンダイカイケツスルマデ、ソコニカクレトレ――ちゅうてな」

「ウフフ、お父さんの芝居のうまいこと」

玄関で、朝刊を投げこむ音がした。

数日が、経った。