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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

という抗議が出た。警察としては、適法の興行を不許可にすることは出来ない。そこで、署長は、こっそり、友田喜造に、「なんとかして、公演不能になる方法」を、依頼した。友田は、栗田銀五に命令を降した。栗田は、子分を動員した。――という次第であった。

このため、六月十九日の公演は、中止された。

これを知った金五郎の瞳に、怪しい燐火が燃えた。破れるほど、唇を噛んだ。

(友田喜造が正体をあらわした。すでに、今度の争議にたいして、おれたちの――いや、沖仲仕全部の敵として立つ腹を定めたにちがわん)

それを、疑うことが出来なかった。

七月、八月、となっても、問題は、すこしも、進展しなかった。進展するどころか、長びくことによって、奇妙な倦怠感がただよい、歩調はみだれて、後退、悪化する危険を生じた。

マンは、毎朝、食事のとき、金五郎と勝則とを叱する。

「こんなことで、どうするとですか。あんただちが舐められとるとよ。どうせ、大したこた、しきらんと、たかをくくられとる。向こうは長びかせといて、有耶無耶にしてしまおうという考えじゃ。その作戦に引っかかっとる」

「こっちでも、そのことは、わからんことはないとじゃが、……」