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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
時計を見た。――午前三時四〇分。総罷業決行の時間を、四〇分も過ぎている。この時間には、港湾中、一切の沖積荷役を停止して、引きあげる約束になっているのであった。金五郎は、非常の決意を眉の間に渡らせて、小伝馬船を、寿満丸に漕ぎよせた。
艀は三番ハッチの舷側に着いている。沖仲仕たちが、艀のなかで働いている。スコップ、雁爪を持って、一トン入りの竹の大籠に、石炭をすくいこむ。それは、甲板上のウインチ機械によってまき上げられる。空籠が降りて来る。それに、また、満たす。大籠は三つあって、次々に、廻転していた。金五郎たちが若い時分にやった、小籠を両方にふりわけ、歩板を上下する原始的荷役は、大正七年ごろから、すべて、この、大籠をウインチでまき上げる機械荷役に変化しているのだった。
金五郎は、艀に、飛びあがった。
「責任者は、誰な?」
切迫した面持で、仲仕にきいた。
「高司さんです」
「どこに居る?」
「デッキに居ったようにありますが、……」
「ちょっと」と、金五郎は、まきあげられようとする大籠を止めた。
満載されている石炭のうえに、飛びあがった。左手で籠のロープを握り、デッキの上に向かって、右手をあげて、合図した。