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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
金五郎は、苦笑したが、
「やっぱり、居らん方がええ」
そういって、マンの方に、向きなおった。
マンは、間隔をおいて、堅い姿勢で、つっ立った。
(変な真似をしたら、承知せん)
そう、思っていた。
「お話、承ります」
「大層、しゃちこばっとるなあ。……ま、ええわ。ざっくばらんに話そう。……おマンさん、あんた、この浜尾組に、いつまでも、いなさる気かね?」
唐突すぎて、返事が出なかった。
「林助さんから、あんたが、去年の暮近くに、浜尾組に来なさったこと、聞いた。もう、十ヶ月ほどになるわけじゃね。あんたの方が、ここでは、先輩じゃ。わたしは、この夏に来たばっかりの新米にすぎん。しかし、わたしは、もうこの浜尾組に居ることが、いやになった。はっきりいうても、ええ。わたしは、浜尾親方に、愛想がつきたんじゃ」
ぽつりぽつりと、重い調子で語る金五郎の顔を、マンは、瞬きもせず、見ていた。
「わたしは、仕事が好きじゃし、なんでも、ええ加減にすますことは嫌いじゃから、どんなつまらん仕事でも、一所懸命、やった。それで、来てから間もなく、一人五分くれるようになって、それはありがたいと思うたが、その後、じっと見とると、どうも、浜尾親方のやりかたが、万事、気に食わん。