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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
すると、義務でやっていた吸いつけが、後には、楽しみになるようになった。
ところが、専売局から発見されて、罰金を申しつけられると、父善助は、それきり、ふっつりと、煙草を断ってしまった。しかし、そのときには、マンの方は、もう、味が忘れられなくなっていたのである。
(そういう風に、兄さんは、ちゃんと、金五郎さんに、話しただろうか?)
マンは、あやふやな兄が不安でたまらない。しかし、もう、ためらわず、
「そんなら、頂戴します」
と、その珍しい点火器を受けとった。
「玉井さん、うちのは、どうしとりましたか」
チヱが、きいた。
「まあだ、みんな、大騒ぎの最中ですよ。林助さんも、ステテコを踊ったりして、上機嫌でしたよ。わたし一人、なんだか、馬鹿くさくなって、抜けて来ました。浜尾の親方がつまらんことばっかりいうし、……おマンさんにも、ちょっと話したいことが、あったもんじゃけ……」
「わたし、帰るわ。どうぞ、二人で、ゆっくり、お話しなさい」
「いや、おかみさん、そんな、秘密の話じゃない」
金五郎は、あわてて、止めたけれども、チヱは、洗濯物を丸め、女の子の手を引いて、長屋の奥へ去って行った。