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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
これは、長居するところじゃない、と思うとるうちに、今度のインド丸事件が起った。それで、きっぱり、見切りをつけたんじゃ」
マンは、胸をしめつけられる思いだった。
「荷役に負けたら、喧嘩をふっかけろ、なんて、わたしはあきれたよ。ところが、どうにか、浜尾組の顔が立ったもんじゃけ、今度は、わたしを助ボーシンに取りたててやる、というんじゃ。結構です、というて断ったら――お前の手柄に対して、褒美をやる。三人居るメカケを一人やる。……そんなことを、いう。それも断ったら――なんでも、いえ。なんでも、聞いてやる。……親方が、そういうもんじゃけ――暇を下さい。……そういうたら、それは許さん、というんじゃ。でも、わたしは、もう、心にきめた。明日にでも、この組を出る。……わたしの気持、わかってくれるかしらん?」
「よく、わかります」
「それで、……おマンさん、あんたも、……あんたのような、仕事の出来るひとも、……こんな組に居って、腐ってしまうのは、惜しいと思うて、……出たら、どうかと……」
すると、このとき、長屋の入口が、にわかに、騒々しくなった。
がやがやとなだれこむように帰って来た仲仕たちの中に、寝かされた人間をのせた戸板が、幾つもある。