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あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
春雪写山行「旅」1940(昭和15)年4月<br>黒部川峡谷の話「山岳 第十二年第一号」1918(大正7)年2月<br>枯木の美と怪「国立公園」1952(昭和27)年3月<br>雪山と廃道「山 二巻二号」1935(昭和10)年2月<br>七面山冬ごもりの記「山小屋」1947(昭和22)年<br>黒部川初遡行の追憶「山と渓谷」1939(昭和14)年7月<br>大雪山あれこれ「国立公園」1955(昭和30)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 132,905 字 · 262 页
よほどしっかり岩間に根を食いこませ、腰にうんと力をこめて、その上うまくバランスをとって構えていないと、今度は積雪の重圧にヘシ折られるか、吹きあげる烈風にカッさらわれるか、そんな恐れが多分にあり――なかなかもって、傍で見るほど楽ではないのだ。
さっき岩向うの仲間どもが、なにを言うかと思ったら、
「どうだい肖像とは、おうら山吹だナァ」
「なにしろ小父さんは、齢に似あわず、様子がいいから……画にも描かれようってものさ、おれたちとはわけがちがうワ」
なんのかんのと、ひやかしおる。
「馬鹿を言え!」
俺はどなってやった。――冗談じゃない……様子なんていいか悪いか知ったことか。俺は何も見栄や酔狂で、こんな恰好をしているわけではないのだ。やかましく言うなら、自己保存の本能が、教える知恵……とでも呼ぶべきものの、なせる業だろう。誰だろうと、ここで生きようとする以上、こんな風になるより外あるまいではないか。ただしそこにあの画家が、美を認めたとすれば、俺はそれまで、とやかく言うつもりは毛頭ない――というより能力の外だが、何か空恐ろしいような感じがしないでもない。
いずれにしろ、お蔭で俺は、この通り長生きして、今ではこの界隈の仲間で、年頭らと立てられている。