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あるはいまつのどくはく

ある偃松の独白

中村 清太郎

春雪写山行「旅」1940(昭和15)年4月<br>黒部川峡谷の話「山岳 第十二年第一号」1918(大正7)年2月<br>枯木の美と怪「国立公園」1952(昭和27)年3月<br>雪山と廃道「山 二巻二号」1935(昭和10)年2月<br>七面山冬ごもりの記「山小屋」1947(昭和22)年<br>黒部川初遡行の追憶「山と渓谷」1939(昭和14)年7月<br>大雪山あれこれ「国立公園」1955(昭和30)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 132,905 字 · 262 页

青空文庫

――俺には何だか彼が、楽しそうでもあるし、苦しそうでもあり、嬉しそうにも見えれば、時にはまた哀しげにさえ思われた。「そうか、そうか!」などと、きおい立ってうなずくのは、おおかた新らしい感じを受け取ったか、疑問が解けたか、あるいは画の欠点を見きわめ得たか……そうした場合であるらしかった。

ともあれ彼の心眼が、どれほどずつか俺の胸の奥を照らし出して、それを理解し、表現しようと、懸命に骨折っているということは、俺にもよくわかる気がした。また実際、時々チラと垣間見る彼の絵には、大岩に寄りすがった俺の全身を中心として、霧に煙る雪田が、上半に大きく描き出されてあり、そこに俺の姿勢の必然さも、おのずと物語られているかと思うばかりであった。

これは昨日来、俺の心ひそかに願っていた通り、と言ってもいいはずであるのに、同時に俺は、初めて自分の姿を鏡に映して見せられた――というより、何かしらんそれ以上の、一種の驚きに打たれてしまったのは事実だ。

「フーム……あれが、この俺なのか?」

思わず俺は、うなるように独りごちていた――

「なるほど、美しいといえば、美しいものだナァ!……え、何だと? 誰だ、(それ見ろ)なんて言ったのは?……これはうぬぼれなんかとは、わけが違うぞ! 俺のおいぼれ姿が、よく描けたものよ、と感心しているところだ。