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あるはいまつのどくはく

ある偃松の独白

中村 清太郎

春雪写山行「旅」1940(昭和15)年4月<br>黒部川峡谷の話「山岳 第十二年第一号」1918(大正7)年2月<br>枯木の美と怪「国立公園」1952(昭和27)年3月<br>雪山と廃道「山 二巻二号」1935(昭和10)年2月<br>七面山冬ごもりの記「山小屋」1947(昭和22)年<br>黒部川初遡行の追憶「山と渓谷」1939(昭和14)年7月<br>大雪山あれこれ「国立公園」1955(昭和30)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 132,905 字 · 262 页

青空文庫

聡明な登山者よ、どうか俺たちなども、いたずらに弄り物にしたり、金もうけの種にしたり、焚物に重宝がったりする段でなく、もっと高い精神的な面で、われわれへの理解と共感を深めて欲しい。そしてその純粋性を尊重してほしい。いやもちろんこれは、俺たち草木だけの事ではない。この天外の清浄国土を形ち造る、すべての物象に通じての話だ。――見給え、御身たちが、真に心を清浄にして、それらの物象に接する時、そこにどういう感応が湧き起るか……。

それら自然と人間とが、お互に敬愛の念で結ばれることになったなら、初めてそこに、大きな生命の交流が行われ、それこそ完全な楽園が、この地上の一角に現出して、ひいてはどんなに、自他の幸福と向上をもたらすことであろうか。さもなかったら……ああ、それもこれも、かかって人間の心がけ一つにある。造化の意図も、また恐らくそこに……あッいけない――秋風だ! 急に身にしみて来たぞ。そうか……俺はほんとうにどうかしている、もう、こんな柄にもない、さかしら口は措きにして、さア! 仕事に精を出さなくては……。

〔附記〕――この一篇は、事後その画家が感受した、老偃松の問わず語りを、自らまとめて飜訳したものである。