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あるはいまつのどくはく

ある偃松の独白

中村 清太郎

春雪写山行「旅」1940(昭和15)年4月<br>黒部川峡谷の話「山岳 第十二年第一号」1918(大正7)年2月<br>枯木の美と怪「国立公園」1952(昭和27)年3月<br>雪山と廃道「山 二巻二号」1935(昭和10)年2月<br>七面山冬ごもりの記「山小屋」1947(昭和22)年<br>黒部川初遡行の追憶「山と渓谷」1939(昭和14)年7月<br>大雪山あれこれ「国立公園」1955(昭和30)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 132,905 字 · 262 页

青空文庫

里人でも若い世代は知らないのが通例で、たまたま老人の話を耳に留めているのは例外という程度だ。細野にも七十以上の老人が二十数人はあると聞いて、その人たちにいろいろ尋ねてみたいと思いながら、まだ果さない。私はさきに「発掘」という言葉を用いたが、わが民族の生命を支え来たった稲作り、その指導にあたった功労者の像が、まさに埋もれようとする時代に、それらを記録に留めておくのは、真に意義のある事であり、また大いに愉快な事だと私は思っている。大方の協力を望みたい。

この宿で求められるまま色紙に「山静似太古」の古詩の一句を記念に留めたが、バスの通う山村で、この句にこれほどの実感を盛り得たことは、かつてなかった。

それにしても、こうまで種蒔き爺さんが、あちらにもこちらにも輩出し、それが申し合わせたようによく似た形をしている、というのはどうしたわけか、この疑問は当然起るはずだ。偶然――とは言ってしまえまい。考えてみると、あの像を造る素材たる地形が、山特に日本アルプスには方々にあることに気がつくだろう。即ち小さい脇尾根が、稜線近くから、見かけ上垂直に垂れている、その背※の最も張った所が胴体になり、付け根の辺が笠や頭に、下方のやや崩れた所が脚になる……といったわけだ。