轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
春雪写山行「旅」1940(昭和15)年4月<br>黒部川峡谷の話「山岳 第十二年第一号」1918(大正7)年2月<br>枯木の美と怪「国立公園」1952(昭和27)年3月<br>雪山と廃道「山 二巻二号」1935(昭和10)年2月<br>七面山冬ごもりの記「山小屋」1947(昭和22)年<br>黒部川初遡行の追憶「山と渓谷」1939(昭和14)年7月<br>大雪山あれこれ「国立公園」1955(昭和30)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 132,905 字 · 262 页
そして月光に磨き出された側壁は、一種のピリッと辛いような痛光を反射する。河原の乱石も、しらじらと浮き出す。流水に至っては、まるで蒼い炬火の行列だ。宿の狭い中庭も、妙に広々と見え、一本立ちの大欅が、籠目の影をそこへ布きわたす。その清光の中に立てば、湯上りの頬に、そっと涼しい銀の掌らを当てられる……。
しかし夜空もまた、雲のとざす時が多い。瀬の音は、夜に入って倍加するようだ。湯場ではことさらそうで、また曇った夜ほど、そして深夜ほど、それがいちじるしい。およそ、あらゆる乱雑な音響を綯い固めた、の太い声だ。その間を、まぎれもせず、優しい声が細く透るのは、湧き出す湯のだ。おりおりは、頭上の岩壁や楓の木末から、清水か露か、湯の上へ滴り落ちて、しめやかな音を立てる。小さな角燈がただ一つ、大岩の上にともっていて、湯の烟は羅衣をひるがえすように、ほのめき、鈍い湯のうねりや岩壁のところどころが、おぼろに、まろやかに眼にうつるばかり。たまたま出会う人の姿も、陰が深くて、現われたところは、何か途方もなく大きなもの、の一部分――といった感じだ。湯壺を抱えるアーチ形の大岩壁は、むやみに背伸びをして、闇のどこまで突き入っているのか、わからない気がする。