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あるはいまつのどくはく

ある偃松の独白

中村 清太郎

春雪写山行「旅」1940(昭和15)年4月<br>黒部川峡谷の話「山岳 第十二年第一号」1918(大正7)年2月<br>枯木の美と怪「国立公園」1952(昭和27)年3月<br>雪山と廃道「山 二巻二号」1935(昭和10)年2月<br>七面山冬ごもりの記「山小屋」1947(昭和22)年<br>黒部川初遡行の追憶「山と渓谷」1939(昭和14)年7月<br>大雪山あれこれ「国立公園」1955(昭和30)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 132,905 字 · 262 页

青空文庫

鼠茸はまことに鼠の肢を何本も束ねたようで、柔かくて弾力のある、少し不気味な菌だ。雀茸も珍らしい。木耳に似ているが、扇に短い柄をすげた、という形で、裏には一めんにヒダがある。それを、可愛らしい仔雀の羽をひろげた、いわゆる「ふくら雀」に見立てたのは、働らきがあって面白い。オヒョウに至っては少しく物騒である。まったく、ひょうきんなクリクリ坊主で、いやに細い頸だ。そして薄黄ろい、ヒナヒナした肌の、脳天のところに、ポツポツと青っぽい斑点がある。汁などに入れて食べるが、軽くてプクプク浮いている。歯ごたえもなければ、香りも、味も、そっけもない、泡沫の固まりのようなものだ。それも、少し成長しすぎた奴は、中から妙な粉(胞子だろう)を吹いて、とても咽喉へ通らない。自然薯も採れる。何しろ、えらい岩のはざまに食い込んでいるので、岩を壊してとるのだから、一日がかりで二、三本と掘れないそうだ。見たところ、ガリガリの肌目で、電光形に曲りくねり、仙人の持っている杖のようだ。しかし擦りおろすと、アクのため色は黒いが、腰が強く、甘味が豊かで、コクがあり、とても平地のなどくらべものにならない。