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したやそうわ

下谷叢話

永井 荷風

自序「下谷叢話」春陽堂、1926(大正15)年3月20日<br>第一~第四「女性 第五巻第二号」プラトン社、1924(大正13)年2月1日<br>第五~第十一「女性 第五巻第三号」プラトン社、1924(大正13)年3月1日<br>第十二~第十五「女性 第五巻第四号」プラトン社、1924(大正13)年4月1日<br>第十六~第二十二「女性 第五巻第五号」プラトン社、1924(大正13)年5月1日<br>第二十三~第二十九「女性 第五巻第六号」プラトン社、1924(大正13)年6月1日<br>第三十~第三十五「女性 第六巻第一号」プラトン社、1924(大正13)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 122,971 字 · 246 页

青空文庫

鉄砲洲は江戸時代には諸国の廻船の発著する湊である。『房山集』巻頭の絶句に「海面風収夕照閑。」〔海面風収マリ夕照閑ナリ〕と言っているから、金沢通の廻船が八丁堀の川口から纜を解いたのは静な秋の夕暮であった。枕山は金沢の酒亭に独酌し、猿島横須の景を見て浦賀に出た。浦賀の繁華はその律詩の中、「暮管朝絃声不断。西眉南瞼色無双。」〔暮管朝絃声断タズ/西眉南瞼色双ブ無シ〕の対句に言現されている。浦賀から再び船に乗って房州の高崎に著した。時節は既に冬近くなっていたが南国の山水はまだ夏のようであったと見えて、枕山は「南中景物従頭錯。路草過秋尚浅青。」〔南中ノ景物頭従リ錯ヘリ/路草秋ヲ過ギテ尚浅青ナリ〕と吟じた。高崎から平久里に滞在して洲ノ崎、白浜、野島の嶮路を跋渉して鏡ヶ浦に出るや遥に富岳を望み見た。布良から竹原村に来った時には「板橋の霜色沙よりも白く」、館山では冬も漸く寒くなり、その年もいつか残り少くなっていた。

「客中雑吟」四首の中ここにその一首を採録する。「少小辞家事遠行。西征纔了又東征。貧来※(「くさかんむり/(止+頁+巳)/夂」、第3水準1-15-72)府※※句。