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したやそうわ
下谷叢話
永井 荷風
自序「下谷叢話」春陽堂、1926(大正15)年3月20日<br>第一~第四「女性 第五巻第二号」プラトン社、1924(大正13)年2月1日<br>第五~第十一「女性 第五巻第三号」プラトン社、1924(大正13)年3月1日<br>第十二~第十五「女性 第五巻第四号」プラトン社、1924(大正13)年4月1日<br>第十六~第二十二「女性 第五巻第五号」プラトン社、1924(大正13)年5月1日<br>第二十三~第二十九「女性 第五巻第六号」プラトン社、1924(大正13)年6月1日<br>第三十~第三十五「女性 第六巻第一号」プラトン社、1924(大正13)年7月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 122,971 字 · 246 页
また湯島の酒楼松琴楼は松金屋のことで、広重の錦絵「江戸高名会席尽」に不忍池を見渡す楼上の図が描かれている。
枕山の詩賦には毎篇酒の一字を見ざるは罕である。この年枕山は「酒痴歌」と題する長句を作って梅痴上人に示した。その引に曰く「余ガ性、酒ヲ飲ンデ少シク量ヲ過スヤ則チ省記スル所ナク、殆ド健忘者ニ類ス。寓院ノ主梅痴上人毎夕飲ヲ許ス。上人ハ灯ヲ点ジテ韻ヲ検シ、余ハ座傍ニ酌ム。一句ヲ得ルニ及ンデコレヲ余ニ質ス。余已ニ沈酣シテ何ノ語タルヲ弁ゼズ。答フル所アルイハソノ問フ所ニ異ル。然リトイヘドモ上人ノ寛懐固ヨリコレヲ罪セズ。余醒メテ後赧然トシテ自ラ愧ヅ。因ツテ酒痴ノ歌一篇ヲ作リ以テ上人ニ謝シ兼テ自ラ嘲ヲ解クトイフ。」わたくしはこの引を読んで清絶言うべからざる思に打たれた。芝山内の僧房に老僧は端座して詩巻を攤き、年少の詩人は酒盃を手にして灯下に相対している光景が歴然として目に浮び来った故である。
この年八月十五日の夜には月が明かであった。『枕山詩鈔』に「中秋。横山懐之、県晴峰、中茎孔通ト同ジク墨水ニ遊ビ月ヲ棹月楼ニ賞ス。夜半舟ヲツテ帰ル。」として七言絶句六首を載せている。