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やまのじんせい

山の人生

柳田 国男

山の人生「アサヒグラフ 第四巻第二号~第五巻第七号」朝日新聞社、1925(大正14)年1月7日~8月12日<br>山人考「大正六年日本歴史地理学会大会講演手稿」1917(大正6)年11月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,022 字 · 226 页

青空文庫

踵にあたるところには地下水の露頭があり、その傍には小さな堂もあった。それからまた東南方には二ヶ処の足跡あり、駒沢村にあるものは更に偉大であった。いずれも泉の噴出に起因する窪地で、形状は足跡とも見られぬことはなかった。上総の鶴枝村で見たものは、小川を隔てて双方の岡の上にあった。その一つはすでに崩れているが、他の一つは約一畝歩、四周の樹林地の中にこれだけが土地台帳で別筆となって、その分を開いて麦か何かが播いてあった。甲州信州辺のデエラボッチャも、たいていは孤立した湿地であったが、そうでない足跡もあるようである。何にしても附近と地形が違って、それがほぼ足形をしておれば、大人の跡といったのである。

大人は富士を脊負うて、いずれへか持って行こうとしたり、または一夜に大湖を埋めようとして簣を以て土を運んだ。その簣の目をこぼれた一塊が、あの塚だこの山だという話はどこにでもある。つまりは古くからの大話の一形式であるが、注意すべきはことごとく水土の工事に関聯し、ところによっては山を蹴開き湖水を流し、耕地を作ってくれたなどと伝え、すこぶる天地剖析の神話の面影を忍ばしむるものがある。