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やまのじんせい

山の人生

柳田 国男

山の人生「アサヒグラフ 第四巻第二号~第五巻第七号」朝日新聞社、1925(大正14)年1月7日~8月12日<br>山人考「大正六年日本歴史地理学会大会講演手稿」1917(大正6)年11月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,022 字 · 226 页

青空文庫

和銅・養老の交まで、この通り風俗を異にする人民が、その辺にはいたのであります。

右にいう異俗人は、果していかなる種類に属するかは不明であるが、『新撰姓氏録』巻の五、右京皇別佐伯直の条を見ると、「此家の祖先とする御諸別命、成務天皇の御宇に播磨の此地方に於て、川上より菜の葉の流れ下るを見て民住むと知り、求め出し之を領して部民と為す云々」とあって、或いはその御世から引続いて、同じ者の末であったかも知れませぬ。

この佐伯部は、自ら蝦夷の俘の神宮に献ぜられ、のちに播磨・安芸・伊予・讃岐および阿波の五国に配置せられた者の子孫なりと称したということで、すなわち「景行天皇紀」五十一年の記事とは符合しますが、これと『姓氏録』と二つの記録は、ともに佐伯氏の録進に拠られたものと見えますから、この一致をもって強い証拠とするのは当りませぬ。おそらくは『釈日本紀』に引用する暦録の、佐祈毘(叫び)が佐伯と訛ったという言い伝えとともに、一箇の古い説明伝説と見るべきものでありましょう。

サヘキの名称は、多分は障碍という意味で、日本語だろうと思います。佐伯の住したのは、もちろん上に掲げた五箇国には止りませぬが、果して彼らの言の通り、蝦夷と種を同じくするか否かは、これらの書物以外の材料を集めてのちに、平静に論証する必要があるのであります。