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やまのじんせい
山の人生
柳田 国男
山の人生「アサヒグラフ 第四巻第二号~第五巻第七号」朝日新聞社、1925(大正14)年1月7日~8月12日<br>山人考「大正六年日本歴史地理学会大会講演手稿」1917(大正6)年11月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,022 字 · 226 页
しからばその残りの旧弊な多数は、ゆくゆくいかに成り行いたであろうか。これからがじつは私一人の、考えて見ようとした問題でありました。
自分はまず第一に、中世の鬼の話に注意をしてみました。オニは鬼の漢字を充てたのはずいぶん古いことであります。その結果支那から入った陰陽道の思想がこれと合体して、『今昔物語』の中の多くの鬼などは、人の形を具えたり具えなかったり、孤立独往して種々の奇怪を演じ、時としては板戸に化けたり、油壺になったりして人を害するを本業としたかの観がありますが、終始この鬼とは併行して、別に一派の山中の鬼があって、往々にして勇将猛士に退治せられております。斉明天皇の七年八月に、筑前朝倉山の崖の上に踞まって、大きな笠を着て顋を手で支えて、天子の御葬儀を俯瞰していたという鬼などは、この系統の鬼の中の最も古い一つである。酒顛童子にせよ、鈴鹿山の鬼にせよ、悪路王・大竹丸・赤頭にせよいずれも武力の討伐を必要としております。その他吉備津の塵輪も三穂太郎も、鬼とはいいながらじつは人間の最も獰猛なるものに近く、護符や修験者の呪文だけでは、煙のごとく消えてしまいそうにもない鬼でありました。