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やまのじんせい

山の人生

柳田 国男

山の人生「アサヒグラフ 第四巻第二号~第五巻第七号」朝日新聞社、1925(大正14)年1月7日~8月12日<br>山人考「大正六年日本歴史地理学会大会講演手稿」1917(大正6)年11月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,022 字 · 226 页

青空文庫

今日知れている限りの山人生息地は、北では陸羽の境の山であります。ことに日本海へ近よった山群であります。それから北上川左岸の連山、次には只見川の上流から越後秋山へかけての一帯、東海岸は大井川の奥、次は例の吉野から熊野の山、中国では大山山彙などが列挙しえられます。飛騨は山国でありながら、不思議に今日はこの話が少なく、青年の愛好する北アルプスから立山方面、黒部川の入なども今はもう安全地帯のようであります。これに反して小さな離島でも、屋久島はいまなお痕跡があり、四国にも九州にももちろん住むと伝えられます。四国では剣山の周囲ことに土佐の側には無数の話があり、九州は東岸にやや偏して、九重山以南霧島山以北一帯に、最も無邪気なる山人が住むといわれております。海が彼らの交通を遮断するのは当然ですが、なお少しは水を泳ぐこともできました。山中にはもとより東西の通路があって、老功なる木樵・猟師は容易にこれを認めて遭遇を避けました。夜分には彼らもずいぶん里近くを通りました。その方が路が楽であったことは、彼らとても変りはないはずです。鉄道の始めて通じた時はさぞ驚いたろうと思いますが、今では隧道なども利用しているかも知れませぬ。