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やまのじんせい
山の人生
柳田 国男
山の人生「アサヒグラフ 第四巻第二号~第五巻第七号」朝日新聞社、1925(大正14)年1月7日~8月12日<br>山人考「大正六年日本歴史地理学会大会講演手稿」1917(大正6)年11月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,022 字 · 226 页
巻一にあるが、亀井と馬が合うたとすれば能登で別れてしまったのではなさそうだ。『広益俗説弁』巻十三には、海尊高館の落城に先だって山に遁れ、仙人となって富士・浅間・湯殿山などに時々出現するとあるが、羽前最上郡古口村の外川神社の近くにも、海尊仙人が住んでいたという口碑あり、また陸前気仙郡の唐丹の観音堂の下にも、昔常陸坊が松前から帰りがけにこの地を通って、これは亀井の墓だと別当山伏の成就院に、指さし教えたと伝うる墓があった。永い年月には何処へでも往ったろうが、それにしてもあまりに口が多く、また話が少しずつ喰違っているのは、やはりたくさんの同名異人があったためではなかったか。ことに寛永の初年に陸中平泉の古戦場に近い山中で、仙台の藩士小野太左衛門が行逢うたというのは、よほど怪しい常陸坊であった。源平時代の見聞を語ること、親しくこれを歴た者の通りであった故に、小野はただちに海尊なることを看破し、就いて兵法を学び、また恭しく延年益寿の術を訊ねた。異人答えて曰く、もと修するの法なし、かつて九郎判官に随従して高館にいるとき、六月衣川に釣して達谷に入る。一老人あり招きて食を供す。