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やまのじんせい
山の人生
柳田 国男
山の人生「アサヒグラフ 第四巻第二号~第五巻第七号」朝日新聞社、1925(大正14)年1月7日~8月12日<br>山人考「大正六年日本歴史地理学会大会講演手稿」1917(大正6)年11月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,022 字 · 226 页
冬になると暖かい海辺の砂浜などに出てくるのから察すると、彼らの夏の住居は山の中らしい。伊豆へは奥州から、遠州へは信濃から、伊勢の海岸へは飛騨の奥から、寒い季節にばかり出てくるということも聴いたが、サンカの社会には特別の交通路があって、渓の中腹や林の片端、堤の外などの人に逢わぬところを縫うている故に、移動の跡が明らかでないのである。
磐城の相馬地方などでは、彼らをテンバと呼んでいる。山の中腹の南に面した処に、いくつかの岩屋がある。秋もやや末になって、里の人たちが朝起きて山の方を見ると、この岩屋から細々と煙が揚がっている。ああもうテンバがきているなどという中に、子を負うた女がささらや竹籠を売りにくる。箕などの損じたのを引き受けて、山の岩屋に持って帰って修繕してくる。
土地の人とはまるまる疎遠でもなかった。若狭・越前などでは河原に風呂敷油紙の小屋を掛けてしばらく住み、断りをいってその辺の竹や藤葛を伐ってわずかの工作をした。河川改修が河原を整理してしまってからは、金を払って材料の竹を買う者さえあった。しかも土着する者は至って稀で、多くは程なくいずれへか去ってしまう。