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やまのじんせい

山の人生

柳田 国男

山の人生「アサヒグラフ 第四巻第二号~第五巻第七号」朝日新聞社、1925(大正14)年1月7日~8月12日<br>山人考「大正六年日本歴史地理学会大会講演手稿」1917(大正6)年11月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,022 字 · 226 页

青空文庫

鬼子の最も怖ろしい例としては、明応七年の昔、京の東山の獅子が谷という村の話が、『奇異雑談集』の中に詳しく報ぜられている。『玄同放言』三巻下には全文を引用しているが、記事にはあやふやな部分がちっともなく、少なくとも至って精確なる噂の聞書である。その大要のみを挙げると、この家の女房三度まで異物を分娩し四番目に産んだのがこの鬼子であった。生まれ落ちたとき大きさ三歳子のごとく、やがてそこらを走りあるく故に、父追いかけて取りすくめ膝の下に押しつけてみれば、色赤きこと朱のごとく、両眼の他に額になお一つの目あり、口広く耳に及び、上に歯二つ下に歯二つ生えていた。父嫡子をよびて横槌を持ってこいというと、鬼子これを聞いて父が手に咬みつくのを、その槌をもって頻りに打って殺してしまった。人集まりてこれを見ること限りなしとある。その死骸は西の大路真如堂の南、山際の崖の下に深く埋めた。ところがその翌日田舎の者が三人、梯子をかたげてこの下を通り、崖の土の少しうごもてるを見て、土竜鼠がいるといって朸のさきで突いて見ると、ひょっくりとその鬼子が出た。三人大いに驚いてこれは聞き及んだ獅子が谷の鬼子だ。