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しん・へいけものがたり

新・平家物語

吉川 英治

02 ちげぐさの巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页

青空文庫

土を、まだらに抱えていることがわかる。

下駄作りの家、鍛冶師の小屋、紙すきの家族、革をなめす人たち。――染屋は、手くびに自分の色を持ったこともなく、かせいでいる。

年ごとの秋の出水に、この界隈は、やたらに池や小川ができ、かせぐ親たちから目のかたきにされている子の餓鬼たちが、鴫にわなをかけたり、釣をしているかと見れば、疫痢の病人を家にもつ女が、病人の汚物を捨てるにかっこうな場所ともして、鮒の稚魚だけは、よく肥えていた。

『……さて。たずねてみるしかあるまいて』

清盛は、立ちどまった所の付近を見まわした。――と、人垣をなして、何か、わいわい騒いでいる群れがある。ケケケケコッ……と軍鶏のするどいなき声もする。

『ア。やってるな。鶏合わせだ』

清盛も、いつか、その人の輪に、一つの顔を加えていた。

そばの家は、鶏師の宿であろう。かみさんや、老婆や子らまで、縁先へ出て、見物しているのだ。そして、往来の者を、立会人として、恐らしい顔つきをした鶏師とその弟子は、秘蔵の鶏かごをうしろにひかえ、挑戦にきたひとりの小冠者と、勝負の賭け物を、公約している様子なのである。

『銭でこい。