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しん・へいけものがたり

新・平家物語

吉川 英治

02 ちげぐさの巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页

青空文庫

篝り火談議

あとの畷のやみには、いつまでも、小さい焔を振っているのが見える。

たれか思い得たろう。後年、六波羅の平家一門中、権謀むしろ入道清盛をもこえて、世に“縉紳の侠”とおそれられた平大納言時忠こそ、実に、良家の一不良――この日のお玉杓子であろうとは。

篝り火談議

朝。――兄弟たちは、こもごもに、父忠盛の居間へ、あいさつに出る。

いちばん下の、幼い家盛へたいしてすら、父の方でも、ていねいに、礼をうけて、何か、朝の一言を、元気にいってやる。武者の家のしつけであり、ことに、母のいない子らにとっては、これが、太陽とともに、かれらの朝を、ほがらかにした。

清盛は、前日の使いのおもむきを、父へ答えていた。

『時信様からは、べつに、御返書はございませんでした。穀倉院には、おいでにならず、丹波口のおやしきまで、伺いました。いや、あの辺は、実に、分かりにくい土地で……やっと尋ねあてたほどです。夜に入るまで、馳走にあずかり、くれぐれ、よろしくとのおことばで』

それから、途中で会った鳥羽の僧正の言づても伝えたりすると、忠盛は、

『僧正には、あいかわらず、お絵を描いて、ひとり楽しんでいらっしゃるとみえるの。