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しん・へいけものがたり

新・平家物語

吉川 英治

02 ちげぐさの巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页

青空文庫

新妻月夜

『わしの口真似をしてはいかんよ。――おまえが、あのひとに、そんな口をきく理由はない。おまえとあれとは、どこまでも、母と子であることだ。……な。……愛情はすべてを越えた愛情であるときに、ほんとの美しさを持つ。冷たい母子も、あたたかい母子となってくる』

清盛は、黙った。父の心は、子のかれにとって、まだまだ咀嚼するにはむずかしい。深いのやら、あるいは、未練なのやら、分かるような気もするし、まったく分らないようにも思う。

いずれにせよ、屋敷の前へ、もう来ていた。木工助家貞、平六家長、ほかの郎党たちも、破れたりといえど大門を開き、貧しくはあれど小坪や式台を清掃して、明あかと、灯もかかげて、待ち迎えていてくれる。

こういう緊密な生活ぶり、調和と清潔さは、つい百日前までは、見られなかった家である。なんで去った母を惜しもうや。決して、さびしいとは思わない。なぜ父は、それを信じてはくれないのだろう。清盛は、そう思った。

新妻月夜

その年の秋、八月のなかば。

源ノ渡は、院の武者所のうちでも、同年輩のごく親しい友、十名ほどに、状をまわして、

『何もないが、ささやかに酌み分けたい。