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しん・へいけものがたり

新・平家物語

吉川 英治

02 ちげぐさの巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页

青空文庫

出離

出離

世の有様を、鳥獣の遊戯に擬して、思うままな諷刺画を描き、自分も遊戯三昧に暮していた鳥羽僧正は、保延六年の秋、忽然と、死んだ。――八十余歳であったという。

『わしは僧侶だから、死んでも、僧侶のお経は欲しゅうないなあ。法衣のすそから、尻ッ尾を出している大僧正だの、大法師、小法師どもの化け競べなど、日ごろに描いておるでの。仰山に、葬式などしてくれたら、自分で自分を描いたことになり終わろうで……』

亡くなる数日まえに、そういったとか。こんな奇行もあったとか。数かずな思い出も、今は、主のない鳥羽の一草庵に降る落葉と同じものでしかない。

でも、九条家の施主で、簡素な法要だけは営まれた。勅使もあり、院の代参も見えた。貴賤、雑多な会衆で、鳥羽はずれのいなかびた草庵への道を、織るような人や牛車であった。

『お。六条判官どのの御子息でしたな。……これは、思わぬ所で』

佐藤義清は、連れの男と一しょに振り向いて、そういった。呼びとめたのは、源為義の子、義朝だった。道の木蔭へ寄って、義朝は、あらためて、あいさつした。

『あれきり、お目にもかかっておりませぬゆえ、人違いしてはと、あやぶみましたが』