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しん・へいけものがたり
新・平家物語
吉川 英治
02 ちげぐさの巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页
六波羅開地
六波羅開地
五条の大橋は、まだ、新しかった。
数年前から、覚誉という一法師が、よくつじに立っていた。覚誉法師は衆の公共心に訴えて、零細な浄財を乞い、ある日は、自分もともに、石をかつぎ、土を盛り、夜は河原の小屋に寝て、やっと近年、竣工を見たものであるという。
『世には、寺院と寺院で、焼き打ちし合っている山法師もあれば、また、こういう奇特な街の御僧もある――』と、人びとはいった。
五条に橋が架かってから、庶民の生活図が、南へ伸びた。またたくまに、清水寺のふもとや、音羽川、鳥辺野あたりまで、人家が、ながめられて来た。
それまでは、生うるがままな雑草と、雑木の原だった六波羅にも、大きな武者屋敷が、建ちかかっていた。
『どなたの、お住居であろ?』
と、通る人は、よくいったが、だれも、ここに住む者を、まだ知らない。
久安元年の、夏の初め。まだ、壁塗りもよく仕上がらないうちに、大勢の家人、家族をひきつれて、これへ移って来た主人を見ると、それは、近ごろ、中務大輔に昇進した平太清盛と、その妻子であった。
『どうだ。……水薬師の古館とは、くらべものになるまいが』
清盛は、妻へ、誇った。