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しん・へいけものがたり
新・平家物語
吉川 英治
02 ちげぐさの巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页
鶏持ち小冠者
『……はてな。こんな場末に、朝臣の家などがあるかしら。どっちへ出ても、雑人町のあばら家ばかりだが』
十月のある日。小春びより。
清盛は、父忠盛の手紙をもって、丹波口、西七条のあたりを、うろついていた。
父のことばによれば、
(時信どのは、穀倉院に勤めておられるから、そこへお訪ねしたがよい)
と、簡単だったので、穀倉院へ行ったところ、そこの吏生がいうには、
(お見えになっていましたが、何か、先例を調べることがあるとかで、大学寮へ行かれたようです。大学寮の書庫へ行ってごらんなさい)
とのことだった。
勧学院も大学寮も、またその穀倉院も、みな壬生の一地域なので、遠くはない。しかし、宛名の人は、そこにもいなかった。
(たぶん、もうお帰りでしょう。このごろは、公務もおひまのようですから)
御自宅は、西七条というのも、書庫の吏生に聞いてきたことなのである。――が、歩いてみると、それらしい屋敷も見えず、ここらあたりの、道のわるさや、戸毎の不潔さといったらない。
唐朝うつしの、官庁楼門や、純大和様式の皇居、離宮、公卿館のある地区などは、ひとまず、幾世紀の風化と、人文の調和のもとに、この国の平安京をつくりあげてはいたが、隈なく歩いてみると、市坊の裏や場末には、今なお、あちこちに、穴居の民からいくらも進んでいない貧しい部落と未開