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しん・へいけものがたり

新・平家物語

吉川 英治

02 ちげぐさの巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页

青空文庫

二院政治の初めにあたって、時局の不安と、山門勢力に備えるため、朝廷の兵部にかわるものとして、新たに組織されたときから、その大部分の員数は、地方武士の――源氏系、平氏系の野性を召集したにはちがいないが、昔からの衛府の武人や、諸家の随身の内からも、あわせて、採用した者が少なくない。

源ノ渡と、花山院の左大臣源ノ有仁との関係が、そうであったし、佐藤義清もやはり、徳大寺内大臣の家人であって、また、鳥羽院北面の士でもあった。

――で、いま、心当りをつけた者が、そこを訊き合わせてみると、果して、義清は、徳大寺実能によばれて、こよいの歌合わせの末席にいることがわかった。

万葉のむかしから、和歌の道には、貴賤のへだてはない。一布衣にすぎない義清だが、文学に心ある者として、かつは、主家すじの徳大寺実能のひきたてもあって、院の歌合わせにも、仁和寺の法親王の御会にも、義清はよく席に連なる栄に浴していた。

おりふし、かれは、家僕の凶変を聞いても、にわかに、立ちかねる用事でもしていたのであろうか。――一方では、清盛たちの同僚が、

『まだ来ぬが。どうしたのだろう?』

『たしかに、義清の耳へ、はいったのだろうか。