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しん・へいけものがたり

新・平家物語

吉川 英治

02 ちげぐさの巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页

青空文庫

これを、覚然の出たらめでないとすれば、それから後、忠盛の家で、月満たずに産まれた子は、だれの子とするのが正しいか――となる。

光遠は、甥の盛遠に、以上のことを、話したものの、その後では、

『この秘事。めったに、ひとには、口外すなよ』

と、かたく口どめした。

盛遠も、きょうまでは、たれにももらしたことはない。だがたまたま、塩小路で久しぶりに、見すぼらしい平太清盛のすがたを見るにおよび、何か、つつんでいられなくなったのだ。

――一面には、大いに、かれを鼓舞してやろうという、盛遠らしい気分も手伝い、わざわざ酒を飲みにさそって、かれにささやいたものだった。

*   *   *

『じじ。これ、木工助。……おれはもう知ってしまったぞ。秘しても、むだなことだ。……むかし、二十年前、時雨の夜に、おまえは、その眼で見ていたはずだ。盛遠のはなしは、うそか、真か。――いや、おれはいったい、たれの子なのか。いってくれい。……木工じじ。……明らさまに、この平太清盛へ、いい渡してくれやい。そ、そのうえで、おれはおれの血を考え、生涯のあゆみを決めねばならぬ。……頼む。