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しん・へいけものがたり
新・平家物語
吉川 英治
02 ちげぐさの巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页
はやく来い。はやく』
やしき中の、騒動とはなった。
貧しくても、さきには、地方の守まで勤め、院の武者所をも預けられていた忠盛である。食うや食わずも承知のうえで、なお、仕えている家の子郎党は、つねに二、三十人はいた。
中には、木工助家貞のせがれ、平六家長もある。平六は、父の木工助が、けさから奥へ呼びつけられたままなので、庭垣の外に、うずくまり、父の身を案じていたおりだった。そこで、まっ先に、同輩たちを呼びたてながら、ただごとならぬ悲鳴、物音、叱の場所まで、ひと息に、馳けつけて来た。
――が、騒ぎは、一瞬の間であったらしい。
縁の上から転び落ちた泰子は、紅梅の袿衣や、白、青の襲衣も、またその黒髪もふり乱して、大地にうつぶし、どうかしたのか、そのまま起きもしないのである。
また。すこし離れた所には。
清盛が、肩に波を打ちながら、父忠盛に、腕くびをつかまれていた。いかにも、複雑な形相だった。阿修羅の像みたいに、突っ立っている。
そう二つのものの間に、経盛と木工助は、茫然としていたが、召使たちの跫音が、ここへ集まって来るのを知ると、泰子は、蒼白な顔を、地面からきッと上げて、