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しん・へいけものがたり

新・平家物語

吉川 英治

02 ちげぐさの巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页

青空文庫

あれからのかれは、自分の血と肉とに、こんなもの――という軽蔑をつねにもっている。

それが、青春の放埓へむかって、いつでも、崩れんとしているのを、何かに、あやうく支えられているだけのかれにすぎない。父ならぬ父忠盛の愛が支柱であった。あのスガ目のひとの大愛と長い忍苦を考えると、かれは、素直に返らずにいられなくなる。その人を真実の男親と思い、よい子になって、身も大切に持とうと思う。

……が。母を見ると、気もちは、たちまち、逆になった。このむくむくとたえず頭をもたげたがる異端な血こそ、かれが母からもらった唯一のものかも知れなかった。

泰子は、何か、あき足らなかった。子の清盛が、すこしも自分へ、あわれを見せないからである。もっと、涙をうかべて慕ったり、いつかの癇癪事を詫びもしたりすることだろうと思っていたのに、それも示さず、姫へもなじまず、いたずらに、加茂競馬の眼にもあまる群集の上にばかり気をつかっているふうに見える。

『平太。……たれに、そのように、気がねをしておるのです。忠盛どのに知られては、悪いとでも、思うてかの』

『ええ。……父上も参っていますから、もし父上が、わたくしがここにいるのを見たらと』