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にっき
日記
宮本 百合子
11 一九二五年(大正十四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,462 字 · 72 页
朝ゆっくり眠り、おなかがすいたので起床。二階で、Yと二人家政上のいろいろ打ち合わせをする。彼女実に細かに精算し予算をたて、生活をよろこんで居るのがありありとわかる。自分よりその点深く。私は仕事に追われて居る故もあり、種々心にかかる一種の憂愁があるので彼女のようにゆかず。家を新たに持つうれしさは、もう味いつくしたのかと淋し。斯う云う風に生活をやり始めても、本当に先のときとは違う。おひなさまというので、国男、美学の本をかりかたがた三越のおこわの折を持って来てくれた。引越したばかりで相当にお客あり。小さい用箪笥の引出しから、アメリカでとった写真をYに見す。彼女しげしげと見、「変ったなあ」と、実に悲しい顔をす。その顔を見たら自分も悲しくなり涙ぐんだ。夜、茶の間に居たらやはりそのつづきが心に出たと見えY、「何て丸くなったんだ、肥った故もあるんだな」と云う。「まるで恨んで居るようじゃあないの」と高く笑った。Y、「――殆ど恨んで居る」と実に真剣に、ひたと私を見て云った。苦しくなり涙を出した。五年の間の生活がわるかった、それが照り返して居るのかと。――理知は、人間の経験に対する彼女のセンチメンタルな感じ方を否定するが、心持はかなりひどく影響された。