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にっき
日記
宮本 百合子
12 一九二六年(大正十五年・昭和元年)
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 25,679 字 · 52 页
三月十九日
三月二十日
今日も風つよし。明るき日向、急に目立って来た硝子の塵、くもり。庭におくれ咲きの薹のたった福寿草。草花が、剪り花ながら新陳代謝早くなり、じき水がくもるようになって来た。
三月十九日(金曜)風 曇
はいしゃ。今日は金冠をかける下拵にて、エンジンひどく、疲る。
クープリンのチェホフの思い出をよむ。一寸
老松館には到頭ゆかぬことにきまる。自分すぐYに雷同し、あとでこまる。これからは注意。
夜より降雪、淡い、水の多い春の雪。
三月二十日(土曜)雪
昨夜、消え消え降って居た雪やまず。
一日降る。
ロシア語、一昨々日のところをやる。ロシア語は複雑でむずかしくていや。
Y、書きかけのものを、こねて居る。何が出来るか。なかなか骨が折れるらしい。
「大道無門」失敗の作なり。惜しき才。
この頃朝大抵九時までに離床。台どころをやるのでつかれ、早く眠る。しかし、頭は何だか密度があらくなるようでいや。『時事』に広告を出して居た女中にハガキを書く。山岡何とも音さたなし。
〔欄外に〕
クープリン、彼は芸術家としてとび切りの一流ではなかった。何故?
彼の、チェホフの思い出にでもある一種の Sweet なところが、何か関係がありはしなかったか。