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にっき

日記

宮本 百合子

12 一九二六年(大正十五年・昭和元年)

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 25,679 字 · 52 页

青空文庫

八月三十日

九月一日

が、一人でゆけず、髪を結ったりして気をまぎらして居たが、夕飯後、Y、町へゆこうという。うれし。出かけ、変な活動の割引きで、チャップリンと、キートンのとち麺棒―― Seven Chances というのを見、かえる。気が変ってよかった。

八月三十日(月曜)

残暑、相当にきびし。仕事にそろそろとりかかろうかと思い、原稿紙を出したついでに一昨年の六月頃Yが安積にくれた手紙を出してよみかえして見、感動した。その頃から見ると、私共の生活は想像もされなかった程度によく行って居るわけだ。この頃のYは、もうあの頃の引こみ思案、自己の放棄、暗いあきらめなど、思い出すことさえ出来ないであろう。彼女は、ずっと単純に自然に生き生きして居る。うれし。

〔欄外に〕

この頃、ささきふさ氏のことを考え、妙にいじらしいみたいな、あわれみたいな、癪にさわるような心持を抱く。

面白し。何かにどうかして書いて見たい。

九月一日(水曜)

八時頃Yの部屋で訳して居るチェホフの手紙をよんで居ると、暗い玄関で人声がし、思いがけず網野さん来。私何だかぞっとした位うれしかった。小さい雨などふり、人が来などしようもない日であった故か。