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にっき

日記

宮本 百合子

15 一九二九年(昭和四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 79,482 字 · 160 页

青空文庫

美しくさえある。いや確かに美しい。悲しみに於て現れる心の美しさを見たと思った。でも

「中條さん、こんどばっかりは――」

と私の手をとった。

「ひとりで考えて、いくら考えたって、ね――頭が変になっちゃって――」

口かずの尠い人が真実をこめ、濃いおかっぱの髪をたたくようにして云った。

自分、泊り、他に三人の人が泊った。夜なか、たべるものが何もない。朝六時頃、茶を入れ、madam の卵があったのを六つゆで皆にたべさせ自分もたべた。

皆用事があるし、かわりばんこに出て、自分ひる間すみ子さん一人っきりにしておけず入棺がすむまで(午後六時頃)居た。

入棺した時、スミ子さん泣きがとまらず、苦しそう故 madam の床の上に横にならせ、一時にせよ泣きぬくまで泣かせた。ブドウ酒をのませた。(三十日)

ペレールにかえり、フロに入り泊った。

十月一日 雨

板倉さんの葬儀。

赤ちゃんを葬ったと同じ墓場へ行った。ピジョン・ホールのような穴へ骨をおさめた。

ペレールへかえった。フロ、泊る。

十月二日 ひどい風

十二時頃まで寝た。

おやたちだけ食事に曾禰さんと出かけ、自分スエ子うちでグチャズしをたべ、それから(八時すぎ)板倉さんへ見舞に行った。