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にっき
日記
宮本 百合子
15 一九二九年(昭和四年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 79,482 字 · 160 页
――ほんと?
なるほど微に音楽の音がする。こういう時、時計のないのは実に不自由だ。自分とび起き女中をよんで昨日の水をすてさせ(ここのホテル Victoria は英国式 Walking stand だ)時間をきいたら八時だという。やれやれ。
いそいで仕度をして何もたべず歩いてサクソニスキー公園近くになると大分人出だ。民衆的服装のもの多し(労働者でも、ここでは腰きり外套などはない。粗末なレインコートなどを着て居る。)
テアトラリヌイ附近へ来ると、店は皆表戸をしめ、鋼鉄の網戸までしめてある。大通りを横断してバリケードのように同じようなレインコートを着、ソフトをひらひらさせ、赤い腕章を巻いた男がわんさと居る。手に手に竹の太いステッキをついて居る。自分たちの目にとび込んだのは夥しい腕章と太く頑強なるステッキの数だけだ。
反動団体だね。
ここでは社会党がこの仕事をして居る。
見ると赤い腕章に何とかミリチアと書いてある。(男だけの群集。腕章とステッキの感じ。)そこをぬけすぎると、赤い旗を立てて行列が待ち合わせて居るが、この列の中にも赤い腕章は混って居る。
行列の中に女殆ど見えず。