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にっき

日記

宮本 百合子

15 一九二九年(昭和四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 79,482 字 · 160 页

青空文庫

新緑にまじって美しい郊外の小家の彼方に山脈が見える。アルプスの裾だ。この山脈が見えるところ、自分には最も Wien のこのましい点だ。

○ションブルーンへ行ったときもあの素晴らしきパゴーラの柱列を透して彼方に山々を眺めるからこそ、白き建築の優雅で堂々たるプロポーションが活きるのだ。

○ウインの建築は視神経の快感によってプロポーションの美を感覚させた。

○その山の上に、ローマ時代の物見の ruin がある。事変が起ると、この山から狼火をあげる。それを又彼方の山の上で見て居て、その塔でも狼火をあげてローマまで順々につたえた。

山は松山だ。真直にのびた松の木の山だ。

○ Wien から十五分ばかりのところにリヒテンシュタインの居城があった。

○ M※(ダイエレシス付きO小文字)dling〔メードリング〕の町。小さく、愛らしい田舎町。それでも七十五年間ペストが流行した後の感謝塔など町の二十歩(一周)位の plaza〔市中の広場〕に立って居る。やはりブロンズ。

○細いうねうねした雨上りの道を二頭立の馬車で山へ山へのぼって行く。リラの花盛り。若葉の濡れた香い。